オクトラ大陸の覇者 設定についての考察(三授編まで) その3:グラム・クロスフォード

04 June 2023

Octopath CotC オクトラ大陸の覇者

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考察その1とその2で扱えなかったグラム・クロスフォードについて、以下の内容(ネタバレを含む)を踏まえて考察してみた。
・大陸の覇者名声を授けし者1~3章
・大陸の覇者リンユウの追憶
・無印アーフェン編4章
・無印クリア後に開放されるサブストーリー

【まとめ】
・クロスフォード家の人間が神の身体となる素質を持つという設定は無印と大陸の覇者で同じ。
・大陸の覇者では、クロスフォード家には「大陸を守護する」という使命と、聖火教創始者である聖者グラキアの血族であるという属性が追加された。また、クロスフォード家は代々、(時の)聖火守指長と協力しながら、封印すべく指輪を探していた(この100年ほどの話とすれば年表との矛盾はない)。
・オージン・クロスフォードがフィニスの門を封印した後に指輪を探し続けたというサザントスの説明は、無印での設定と明確に矛盾する。
・リンユウの存在は、矛盾までとはいかないものの、グラム・クロスフォードという人物に対する印象を一変させるのには十分過ぎた。
・クリスの存在については、大陸の覇者では触れられていない。
・グラム・クロスフォードは、無印でも大陸の覇者でも愛妻家ではあった。しかし子にクロスフォード家の宿命を負わすまいとして具体的な策を打たず、結局それが仇になった。
・サザントスは名授編が始まる前からリンユウの存在を知っていた可能性が高い。



【クロスフォード家とその使命】
クロスフォードの一族は神の身体となる素質を持つという。ここは無印と同じ。オージン・クロスフォードがフィニスの門を封じることができたのも、もしかすると素質によるところが大きかったのであろうか。竜石は単に能力をブーストする、あるいは魔力の貯蔵庫みたいなもので、それ自体は特定の機能を持たないというか。

無印でもクロスフォード家は大魔術師の系譜だという自覚はあったと思うが、「大陸の守護者」とは呼ばれてはいなかったと思う。グラムは無印では薬師であった。
大陸の覇者ではクロスフォード家に指輪を探す使命が追加された。

「クロスフォード家と我々、聖火守指長は手を組んでいた」これは、サザントス個人でなく代々の聖火守指長のことであると思われる。サザントスが人ならざる身で、セラフィナのように200年とか生きているなら話は別だが……。
ただ、この「門を閉じた後も長年かけ指輪を探してきた」というのは明確に無印と矛盾する。

なぜなら、オルサ島の神殿から指輪がなくなっていることが発覚するのはフィニスの門封印後から約120年後の神名暦1520年頃の話なのである。フィニスの門が封印された時点では少なくとも、指輪はオルサ島に安置されていると思われていたはずである。
もしこの時点ですでに指輪がなくなっていたことをどのようにかしてオージン・クロスフォードが察知しており、聖火教会には知らせずに先手を打っていたとしたら、聖火教会の不手際もいいところである。

ここでサザントスは彼の炎でグラムの記憶を消す。神名暦1606年、グラム22歳、三極編開始の9年前のことだったと思われる。グラムの迷いを消すのに記憶を消す必要はなかったし(迷いそのものを炎で焼けばよかった)、解決の目途が全く立っていないのに「古から続く忌むべき契りはここまでだ」としてしまうのも独断が過ぎるように思う。
ところでサザントスはここでさらっとすごいことを言っているのだが、クロスフォード家は聖者グラキアに連なる血族なのか?


【父親としてのグラム】
三授編で一番ショックだったのがこのグラム・クロスフォードまわりの設定である。

セラフィナがリンユウを指して「聖なる血」などと言っているから嫌な予感はしていたが、リンユウがグラム・クロスフォードの落とし子とはどういうことなのか。

いやどうもこうも、落とし子とは本妻ではない女性が産んだ子ということで、グラムには別に本妻がいてリンユウの母親はグラムの本妻ではないということがこのセリフにより確定する。英語ではillegitimate child(隠し子)と訳されている。

無印でのグラム・クロスフォードは、妻の命を救うために息子のクリスを知人に預けてまで旅に出て、薬が間に合わずに亡くなってしまった妻に再会したいがためにフィニスの門を開けるという話に乗ってしまうほどの愛妻家だった。大陸の覇者でも、妻のためにクロスフォード家の使命を投げ出してしまった。しかしその裏で異民族との間に隠し子を儲けていた。
この事実は個人的にかなり興醒めだったのだが、グラムは一体どういう事情でよその女性、しかも(異民族の)移民に子供を産ませるに至ったのか?

グラムについて作中で語られていることは少ないが、アーフェンの「聞き出す」でグラムの年齢が判明している。

グラム・クロスフォードがアーフェンを治療したのは年表によれば神名暦1608年のことで、この時グラムは24歳である。三授編開始時(神名暦1615年)にはグラムは31歳になっている。
第17回オクトラジオによればリンユウは20代である。リンユウの年齢が作中で三授編開始から2~3年経っていた時点でのものだとしても、グラムが10代前半の時の子、ということになる。子供時代の過ち、ということであればリンユウを隠し子と呼ぶのは適当かもしれない。

また、電撃オンラインのインタビュー記事で「あの時代のオルステラ大陸の文明もまさに中世くらいのイメージですし、一定の地位に就いるなどのひとかどの人物であれば、(庶子は)それほど珍しいことではないという設定」と鈴木プロデューサーが語っている。そういう世界では婚外子の扱いなど取りたてて話題にはならないであろう。ましてや子供時代、しかも異民族との過ちである。むしろ婚外子なのに会っているだけましということもある。

しかし「中世の貴族とか日本の戦国時代みたいに、宗家の血を残すことが最重要って考えの時代があったわけじゃないですか。貴重な血を引くクロスフォード家ともなれば、そういう考え方は強くあったんじゃないかなって」であるなら、なぜ引き取らずに放置しておいたのか。生まれていたことすら知らなかったのか。放置して悪用される可能性は認識していなかったのか。放置していたからリンユウも結局セラフィナの餌食になりかけたのではないか。
いずれにせよ脇が甘いと言わざるを得ない。

リンユウがつまづいて転んだときにグラムはリンユウに「立ち上がれるか」と声をかけている。危険な障害物を避けられずに尋常ではない転び方をしたような描写でもなく、普通に歩いていてつまづいた様子であった。リンユウが盲目だと知っていて転ぶ場面を何回か見ていればこういうワードチョイスにはならないように思うので、グラムがリンユウの立って歩く姿を見たのはこの時が初めてだったのではないかと推察される。

リンユウが「おとうさんってあたたかい光のよう……」とか暢気なことを言っているから一見いい話のようだが、生まれてすぐに母親を亡くした盲目の娘に対して「光の見えぬお前だからこそ見えるものもある」とは何事か。「お前は他人よりも険しい道を歩くことになる」お前が娘の人生をだいぶ難しくしているのだが、その自覚はあるか。
このリンユウとの会話がいつなされたものなのかは定かではないが、この無神経極まりないセリフも、若くて人生経験の少なさゆえの失言と思えばまだ納得はいく。

リンユウに何も説明しなかったのは、サザントスの言うように、子供に一族の業を背負わせたくなかったからかもしれない。結果的には思いっきり子供に背負わせているが、この辺は無印でも変わらない。

子に宿命を背負わすまいとするなら、指輪を見つけ出して封印するなり何なりして一段落するまでは子を儲けるべきではなかった。子が生まれてしまったのなら、「私は信じているぞ、お前の強さを」とか「いかなる時にも希望はある」とか言って投げっぱなしにせず、手ずから戦う術を教えるべきだった。

ただ、グラムは無印でもクリスに本当のことを言わず、戦うすべも教えていなかったようなので、そういうことに関してはもともと腰の引けた人物だったのであろう。もしくは、後継者を育てるにはまだ自身が若すぎたのかもしれない。


【リンユウ】
リンユウはどこでどうやって育ったのか。グラムが引き取って育てたとも、知り合いに預けられたとも言及されていない。ただ、言及されていないだけで、兄か姉、または母親の身内がいた可能性はある。

リンユウの話によれば、リンユウの母親はリンユウを産んですぐに亡くなり、父親は今どこにいるのか分からない、とのことである。ヴェルノートからは、リンユウの母親は(異民族の)移民であり、リンユウの家族は大陸各地へ散り散りになったとという話が聞ける。

某掲示板のまとめサイトで、肌の色からグラムの相手はあの女帝ではないかという憶測を見かけ、さすがに突飛だと思った。しかし、世界の大ごとですら半径5メートル以内でいろいろ繋がってしまうこの世界ではむしろそれもアリかな、という気がしてしまう。いや、むしろその方がいろいろ諦めがつく。リンユウの説明とは矛盾するが。

リンユウは、ヴェルノートが自分のせいで緋晶薬の研究に従事し続けざるを得ないと知り、身を引くために嘘をつく。自分がタイタスに人質にされているのに、知ってか知らずか、他でもないそのタイタスに身売りするのは皮肉である。

リンユウの別れ話の口実は見るからに嘘だとわかるが、ヴェルノートはこの嘘を信じてしまう。この嘘が通用してしまうということは、少なくとも大陸各地へ散り散りになった家族とは一応は連絡が取れている状態だったのだろうか。それともこの時点でヴェルノートの精神状態が限界だっただけだろうか……。
なお、結婚にあたって男性側から女性側の家族に支払われるお金のことは、「婚約の金」ではなく結納金とか支度金などと言う。

グラムが妻の治療法を求めて旅に出てから数年後の神名暦1608年にグラムの妻が亡くなるが、おそらくそれを機にサザントスが幼いリンユウを訪ねている描写がある。

この描写だが、グラムの不治の病に罹った妻とはリンユウの母親だった、などというまさかの大どんでん返しの伏線だったりしないだろうか。申し訳ないが、名授編でのライターの言葉選びのファジーさから類推するに、「落とし子」の意味を把握しないまま単語の響きだけでこの語を使った疑いは拭い切れない。
もしくは、リンユウは本当に隠し子ではあったが、サザントスはグラムから個人的にリンユウのことを聞いていたのかもしれない。いずれにせよ、作中では直接的な描写はないが、サザントスはリンユウのことを知っていたと考えられる。
名授序章、フレイムグレース大聖堂でリンユウと会った時に、去り際にリンユウが意味ありげにこちらを振り返り、サザントスもまた意味ありげに呟く。

ただ、サザントスの言う「あの娘」がフィナを指している可能性も否定しきれない。

リンユウ「私は、信じています……人の強さを」

光が見えなかったからこそ人の強さを信じてきたと言うが、光が見えるようになった今はどうなのか?
光が見えるようになった後も、リンユウはこの「いかなる時も希望はある」を金科玉条として生きていく。「私は、信じています……人の強さを」ここで、グラムのセリフが少し形を変えてリンユウから語られる演出は、ちょっと感動的であった。

余談だが、権極3章から名授3章の間にリンユウの髪がずいぶん伸びた。

リンユウがクロスフォードの血を引いているにしても、グラムの実の娘ではなく、遠縁の子にすれば良かったと思う。「一族」なのだから、他にもクロスフォード家の人間は存在するはずである。ロンドの件もそうなのだが、安直すぎる後付け設定は運営の作品世界に対するリスペクトのなさを感じさせ、無印のファンとしてはがっかりポイントである。



【蛇足】
4月13日の全てを授けし者・継章の実装アップデートで、リンユウとロンドのピックアップガチャが開催された。何回か回してみたが、この二人とは今は縁がなかった。

考えてみたら、無印との齟齬を決定的にした二人がピックアップでペアになっているのは興味深い。



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2010年3月31日 再々移転・改題
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