オクトパストラベラー無印と大陸の覇者の設定についての考察(三授編まで)

04 June 2023

Octopath CotC オクトパストラベラー オクトラ大陸の覇者

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大陸の覇者を半年ほどプレイしてきて、自分の大陸の覇者に対する基本的な認識は、

・オクトパストラベラー無印と大陸の覇者は設定を緩く共有している別世界の話
・大陸の覇者の本体はトラベラーストーリーやバトルコンテンツでメインストーリーはおまけ
・意外にキャラゲー要素あり(運営型のゲームなので仕方ない)

あたりに落ち着いた。メインストーリーがなんだかシュパーゲルに添えられるシュニッツェルのようだが、そうなのだから仕方がない。
無印と大陸の覇者は違う世界線の話であるが、ここではそれを念頭に置いた上で、どこまでは辻褄が合いどこからは合わないのか、整理してみたい。


【まとめ】
・指輪は神々が自ら造ったものなのか、フィニスに姿を変えられたものなのかは不明。残りの4柱の神々の行方も不明。
・リブラックはセラフィナに関わること以外は無印と同じである。
・グラキアは聖火教の創始者、オディプスは初代教皇とされるが、彼らの活動時期は年表にそれらしい時期を見つけられず不明である。
・神々の指輪+原初の炎+聖なる血→新たなる神?
・聖火と黒呪炎は本質的には同じとされる。聖火はガルデラを封じる力、黒呪炎はガルデラの司る死の力である。
・禁忌の神殿とフィニスの門はウェルスプリング~マルサリム間と同程度の距離がある。
・マルサリムとスフラタルジャ、ボルダーフォールとクラグスピアはほぼ隣接している。



【無印の主人公たち】
大陸の覇者の物語の始まりは無印の物語の始まる3年前、神名暦1615年である。
年表によれば、南方から異民族に侵略されたのが1597年で、この南方異民族の侵略は権極1章オープニングでは18年前とされている。

「2〜3年前にこんなでかい事件があったのに、それに関わった旅団の話が無印では一切出ない」という意見を見たが、同じ世界線の話だとすると説明がつかない点がある。
無印に登場したキャラ視点で考えると、まずオフィーリアとリアナが名授編関連の事件に関して何も知らないのは無理がありすぎる。
トレサも、中つ海で権授編関連のキナ臭い出来事があったことくらいはわかるだろう。
アーフェンなどは、全極編でエドラス軍とのゴタゴタにモロに巻き込まれているだろうと思われる。
オルベリクも、コブルストンで隠居しているとしても、全極編~権授編でアルティニア王国に何か起こったことくらいは察知するであろう。
プリムロゼは全極4章でエリカ、リシャール、ソロンと会っているが、3人とも変装していたし、それ以上の関わりはないと思う。サイラス、ハンイット、テリオンは、もしかしたら身近に大陸の覇者のストーリーと関わることはなかったかもしれない。

作中での時間を中心に考えてみると、富授序章時点でストーリー内でも少なくとも1年は経っているので、いくつかのストーリーは無印のエピソードと同時進行である。
神名暦1616年、最速で富授序章開始時点で、グラム・クロスフォードであるところの赤目がハイランド地方で暴れ始める。
そもそも大陸の覇者のストーリーは無印の後日談ということにしておけばこの辺の矛盾は綺麗に片付いたのに、なぜそうしなかったのか。


【オルステラの地理】
大陸の覇者の地形図は無印に準拠しているが、全ての町が大陸の覇者で登場するわけではない。大陸の覇者オリジナルの町は相当数存在し、無印と大陸の覇者で共通して登場するのは、クリアブルック、サンシェイド、リプルタイド、グランポート、ヴィクターホロウ、フレイムグレース、アトラスダムの7都市である(三授編時点)。
ここでは、無印にしか登場しない町と大陸の覇者にしか登場しない町の位置関係を検証してみることにした。

重ね合わせの方針として、位置や縮尺は海岸線を基準にして、共通する町(クリアブルックとサンシェイド)を位置合わせの補助に用いた。
しかし、ハイランド地方でマップを重ね合わせようとすると、拡大マップ内には海岸線がなく、エリア内で無印と大陸の覇者で共通する町がサンシェイドのみとなってしまう。
苦肉の策として、広域マップで東リプルタイド海道と北ストーンガード山道の通っている海岸線をギリギリ含めるようにして重ね合わせた。

なんとなくの印象だが、エバーホルドはマップの中央下、ベルケインはマップの右下にあり、この二つの町はそれほど近くないような気がしていた。重ね合わせてみるとエバーホルドとベルケインは谷を挟んで対岸に存在していた。
フィニスの門はエバーホルドとベルケインの南の谷間に、禁忌の神殿はベルケインより北の山頂にある。直線距離にしてもウェルスプリングとマルサリムの間くらいの距離はありそうである。神殿と門はそんなに離れていてよかったのだろうか?
驚くべきはコブルストンの位置で、よく見ればなんと死の谷のすぐ脇、しかもサンランド側である。これはオルベリクがコブルストンに逗留していてエドラス兵の侵略に気がつかないのは無理ではなかろうか。
マルサリムとスフラタルジャがほとんど隣接しているのも驚きであった。

リバーランドとクリフランドも同様に検証してみた。位置合わせは中つ海のサンシェイド側の海岸線、クリアブルック、サンシェイドで行った。この場合は広域マップどうしを重ねているので、共通の町は同位置に来る。中つ海北側の海岸が立体的に見えるのはもともとの地形図にずれがあるためで、試行錯誤したが南側と北側の海岸線を同時に重ねることはできなかった。

ボルダーフォールとクラグスピアも谷を挟んだ対岸に位置しているように見える。ちなみにボルダーフォールの町に隣接しているダンジョンアイコンは(クラグスピアの文字に隠れて見づらいが)ロンド君の実家レイヴァース邸である。
大陸の覇者ではイ・チルロだけ西のはずれにあるように見えてなんだか遠いのだが、無印の地図と重ねてみると意外とクオリークレストやオアウェルが近くて、妙な安心感がある。
ゲーム中にドニエスク周辺の地図を詳細に眺めることはなかったが、改めて見てみると、ガ・ロハ兵が大量の軍船(しかも結構大きそう)であの狭い川を下って中つ海まで来るのは本当に可能なのか疑問である。また、ガ・ロハにあれだけの造船技術があるということは、リバーランドの南西に海または大河があることを示唆している。


【指輪】

そもそも指輪は何のために作られ、どのような経緯で8人(こちらもある意味「指輪に選ばれし者」である)を狂わせてしまったのか。指輪は汚れたために瘴気を放つようになったのか、それとも指輪の力自体は中立で、使う者の信念を反映しているだけなのか。

この問いに対する回答は三授編終章でなされた。

しかし8柱の神々をオルサの復活のために捧げてしまうと大陸が闇に堕ちてしまう。オルサか大陸か。自分だけでは決断しきれなかったフィニスは、試しに指輪を人間に使わせてみて、その結果を見て考えることにする。なぜ指輪の形状でなければならなかったのかは説明がない。
細かいことだが、神の数詞は「柱」である。

しかしこのフィニスの説明は次の記述と矛盾しないだろうか?

これは作中ではなく、名授3章配信から約1か月後、「終章 全てを授けし者」配信の翌日にTwitterで補足されたものである。このような世界創造神話は無印でも見たような記憶があるのだが、どこだったか思い出せない。
それにしても、神々の指輪は一体どのようにして作られたのか。ガルデラとの戦いに疲れた神々が自らその力を込めて大地に残したものなのか? それともフィニスによって姿を変えられた8柱の神々そのものなのか?
また、12柱のうち8柱しか指輪に変えなかったとして、2番目の魔大公ドライサング、5番目の豪武匠ウィンヒルド、8番目の占星師ステオーラ、9番目の魔剣士バロガーの4柱はなぜ指輪に変えられなかったのか。彼らはその後どうなったのか。もし彼らも指輪に変えられていたとしたら、あるいは指輪は神々が自らその力を込めてた作ったものだとしたら、この4つの指輪はどこへ行ったのか。
この4柱はソリスティアでもなかったことになっており、不遇な扱いを受けている。

指輪は最初にフィニスが人間に与えた。作中で明言された指輪の経路は
オスカ(紳商伯)→ヘルミニア(狩王女)
タトゥロック(舞踏姫)(→ゴンスカ)→パーディス(碩学王)
セラフィナ(霊薬公)/リブラック(→シメオン)→アーギュスト(盗公子)
である。

オスカは自分がヘルミニアに与えたと自分で語っている。強欲なヘルミニアに指輪を渡せば必ずや指輪の力を引き出すであろうという目論見があったという。

タトゥロックがパーディスIII世に指輪を与えたと説明するのは、タトゥロック本人ではなくペラギアである。パーディスIII世は、西方異民族の女帝にアゴで使われることに、不満や疑問はもたなかったのであろうか。それとも、あわよくばタトゥロックの指輪も奪うつもりで話に乗ったのであろうか。タトゥロックがパーディスIII世に無償で指輪を与えたとも思えないので、エドラスからガ・ロハへ相応の見返りがあったはずであるが、それは何だったのであろうか。
タトゥロックもタトゥロックで、下手に野心のある者に指輪を与え、しかも集めさせるとなれば、自分に牙を剥いてくるとは考えなかったのか。それともパーディスIII世が指輪を集めたら必ずや自分に献上するという確信があったのであろうか。

アーギュストに指輪を与えたのは、名授3章の回想シーンと追憶の書より、シメオンでほぼ確定と思われる。

ただこの「彼女」というのがセラフィナなのかリブラックなのかは、このセリフからはわからない。「名声を授けし者」というタイトルから、またフィニスは「人間に」指輪を与えたがリブラックは人間かどうかは微妙だというメタ視点から、セラフィナであろうと推察するのみである。また、セラフィナ一味は指輪を3つ所持していたと考えられるが、マティアスには指輪を渡さなかったのであろうか。
タイタスに指輪を与えたのも、名授2章の回想シーンと追憶の書から総合して推察するに、セラフィナであろう。セラフィナもしくはリブラックは、何の目論見があって指輪をシメオンとタイタスに渡したのであろうか。

三授編終章時点で指輪の所持者OCTOPATHのうち残るはO、全授編で新たにキャラが登場するのでなければオディプスかオージン・クロスフォードかオルサくらいしか思いつかない。そして残る指輪は旅団の聖火神の指輪である。
指輪を所持していた者たちの中で、オスカとセラフィナは人間に裁きを下すという目的が共通していたが、セラフィナはそのために自らが神になろうとした。指輪を持っていた者たちは皆力を求めたが、その中で神になると明言したのはセラフィナ一人だった。

ちなみに、フィニスが人間に指輪を託すに至ったそもそもの原因であるオルサが命を落としたのは、オルサがガルデラを産む際にガルデラの魔力に触れたためだが、こういうのを「殺害した」と表現するのは適当ではないと思う。


【リブラック】
ガルデラの血を継ぐ者を名乗る魔女リブラック。

これはオクトパストラベラー2のネタバレなのだが、ソリスティアでは聖火神が人間と成した子の子孫がいるということで、オルステラにも神の血を引いた人間が存在しても不思議ではないかもしれない。グラキアとその子孫クロスフォード一族もひょっとしてその類の人間だったのだろうか?

リブラックが現界するのは神名暦1401年、ザロモンがフィニスの門を開いた時のことである。フィニスの門はもともとは、オルサのいる死の国へ繋がるためにフィニスによって造られたものだが、その後ガルデラとその眷属が死の世界に封じ込められ、結果的に魔神を封印するための門となってしまった。

「私は、セラフィナと2人の邪悪な者を選び……私の血を分け与えた」
この2人の邪悪な者とはシメオンとマティアスのことなのだが、マティアス(当時はマシュー)がリブラックと出会って不老の力を手に入れるのは神名暦1503年、フィニスの門が封印されてから100年ほど後の話である。マティアスは同年にシメオンと黒曜会を設立しているので、シメオンとリブラックが出会ったのもこれと前後する時期だと思われる。

オルステラ大陸旅行記年表神名暦1612年

「それから時が過ぎ……私はある戦いで深手を負った」というのは、神名暦1612年、三極編開始3年前に赤目に変容したグラム・クロスフォードにやられた傷だろうか。そして重要なことは、フィニスの門はこの時点でもう開いているということである。

そして瀕死のリブラックはセラフィナに寄生してしばしの間(3年ほど)休息を取っていたのであった。指輪を利用した儀式はセラフィナが神になるためのものではなく、リブラックが復活するためのものだったという。
考えてみればそれはもっともな話で、8柱の神々の力(あるいはその力を込めた8つの指輪)を合わせるとオルサを復活させるほどの力を持ち、適切な器(≒聖なる血?)があれば、理論的にはオルサを復活させる代わりに新しい神を誕生させることも可能だとしても、一つでは神になるには到底パワーが足りないだろうと思われる。
リブラックはクロスフォードの血のみを求めていて指輪は全く眼中になさそうなのが不思議だったのだが、すでに竜石を使用してフィニスの門を開いてしまっているので必要なかったのかもしれない。

リブラックは無印ではもうちょっとミステリアスな妖女みがあったと思ったが、名授3章ではただの下品なおばちゃんになっててガッカリであった。


【オディプスと聖なる血】
聖火教については、大陸の覇者で設定が追加された。一番大きな変更は聖者グラキアと聖者オディプスだろう。

聖者グラキアについては作中では間接的にしか語られていないが、聖火教の創始者である。
オディプスは元罪人だったが、聖者グラキアの啓示を受けて聖者となった。採火燈を発明し、点在する聖火教会をまとめ初代教皇となった人物である。

年表と辻褄を合わせるのが非常に困難なのだが、オディプスが聖火燈を発明して聖火を各地に灯して回ったのは神名暦700年頃の話なのだろうか? しかし、聖火教会の基礎はそれより200年以上前の神名暦100年頃にはもうできている。
「聖者グラキアの死後、その教えは大陸中に広まってゆき、各地に聖火教会が建てられた」とあるが、年表でそれに相当しそうなのは神名暦200年頃である。
オディプスはグラキアの啓示を受けて聖者になったとされるが、直接の面識はあったのだろうか。直接の面識がなければ、またはグラキアの寿命が数百年あれば矛盾は解消する。

旅団とサザントスとロンドは、地下研究所で発見した写本の切れ端を解読するためにアトラスダムの王立図書館へ調査に赴く。

これまでも、サザントスは明らかに何かを知っているが情報を開示せず、思わせぶりな振る舞いをすることが多かった。ここでもまた妙なことを言い始める。
「神の指輪があれば黒呪炎の力を得られるということか?」という発言の前提は、彼にはすでに「聖なる血」のアテがある、もしくは「聖なる血」は必要不可欠な要素ではないと知っている、ということである。なぜなら「禁忌の夜」には「彼には足りなかったのだ、神の指輪と、聖なる血が」としか書いていないからだ。
しかし「聖なる血とはなんでしょう……?」というロンド君の問いにサザントスはわからないと答えている。本当に知らないのか、それともはぐらかしているのか。

セラフィナもリブラックもサザントスに流れるのが「偽りの血」であることを指摘している。そしてリブラックはサザントスのことを「炎」と呼んでいる。サザントスの出生と彼の操る炎については、この時点では語られていない設定がありそうである。

しかし、それでは「聖火守指長には聖火騎士の中で最も心の綺麗な者がなる」という説明は、事実とは違う可能性が出てくる。とは言え、「聖火騎士の中で最も強く」はまだ評価のしようがあるが、「最も心の綺麗なもの」は計測しようがなく、恣意的なものを感じる。


【聖火】
そもそも、聖火とは何であろうか。

「かつて神々は、とある神を封じるため星の炎を大地に灯した。それが聖火教会の崇める聖火――」年表にも「オルステラ大陸に聖火を灯し、黒呪神ガルデラを封じる」とある。ガルデラが叛旗を翻さなければオルステラに聖火が灯ることもなかった、とも解釈できそうである。

無印オフィーリア4章で、リアナが祈ると原初の炎の種火がみるみるうちに黒くなる。マティアスはそれを「式年奉火に使う種火はその持ち主の心を映すという」「あなたの死者復活を願う心が種火を死の国へと繋げたのだよ」と説明する。
黒呪炎とは封じられたガルデラの力、「死の力」で、人の命を吸うと力を増す。
完全に後知恵だが、マティアスの真の目的が「黒呪炎で世界を我が物とせん!!」であったのなら、放っておいてもオディプスと同じ運命を辿ったと思われる。マティアスは聖火教会の元司祭ではあったが、禁忌の夜は禁書だったため、オディプスが禁忌の夜に黒き炎に焼かれて灰になったことは知らなかった可能性が高い。

「3つの炎」によれば、炎には青、赤、黒の三種類があるが、学長イヴォンが言うにはそれらはは本質的には同じものである。では炎はどのような時に自身の色を変えるのか。

「人の心が完全な闇に染まれば聖火すら黒呪炎に変わる……」聖火が黒呪炎になるのはこのパターンのようである。イヴォン学長は「心が闇に染まる」とは「人の心が欲に覆いつくされること」であると説く。
しかしイヴォン学長は同時に「全ての欲が悪いとは限りません」「人の世を発展させるのもまた欲にほかならないのです」とも言う。「だとしたら心を闇に染めるほどの欲とは……?」というメアリー王女の疑問はもっともである。イヴォン学長の講義がいいところで来客に中断されてしまうのが実に残念である。
オディプスは欲に塗れていなければ青い炎を手に入れられたのだろうか。それとも、神の力を手に入れようなどと考える人間は例外なく欲深いので、必ず黒呪炎になるのだろうか。

この時点では、選ばれし者一行はメルセデスのお使いで本を回収に来るだけで、特に聖火の守り手が黒呪炎に興味を持ったという描写はないはずである。

しかし次のシーンでサザントスが黒き炎に対して妙な執着を見せる。イヴォン学長とルシアの読みは当たっていたのである。「3つの炎」によれば炎の色は性質を表すが、強さについては記述がない。青き炎よりも黒呪炎のほうが強いことにサザントスが気づいた可能性も考えたが、これはセラフィナの黒呪炎にサザントスの青き炎が敗北を喫する前の話である。



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